その人が、どんなに「そうなる可能性の強い星」や「エネルギー」を生まれつき持っているとしても、それらがどのような形で現実に表れるかは決まっていません。
その人の持っている星やエネルギーはひとつだけではなく、いろいろなものが絡み合って現実の生活を作っているのです。たくさんの特性や星の中のどれが一番影響を与えているか、それは、その人のまわりにいる人によっても、事柄によっても、時期によっても、変わってきます。
「この星があります、だからこうなります」と言い切れるほど、簡単なものではないのです。
Lさん(女性)は、結婚しようと思っているDさんのことを占ってもらいました。
占い師は、LさんとDさんの性格や特徴を細かく指摘しました。「大きく見れば当たっている」という曖昧なものではなく、普段Lさんが思っていることや、実際の状況とあまりにも一致している、ぴったりのことを言われたそうです。
「Dさんは、よくあなたにこんなことを言うでしょう。それはDさんがこう思っているからです」→実際、よくそれを言われる。
「Dさんは、あなたのこういう面をとても評価しています」→そこをよく褒められる。一番好きなところはそこだとも言われた。
「Dさんは、あなたがこういう服装をするのを好みます」「こういうデートのスタイルが好きです」「物事をはっきりと伝え、心理作戦などはありません」→すべてそのとおり。
「こういうことを言われるのは嫌いです」→それでケンカをしたことが何度もあった。
「両親とぶつかるので、家を継ぐ商売は向いていません」→それが原因で家業を継いでいない。
「○○、××、☆☆のような職種が向いています」→××の仕事をしている。
「こういうことが弱点です」→今までそのとおりのことで失敗している。
「そういうDさんですから、あなたが○○を伝えるにはこういう言い方をすればいいです。時期はいつがいいです」
「Dさんは、今あなたのことをこう思っています。こういうふうにしたらダメです」というようなアドバイス的な話もありました。
ところが、仕事の話になったときに、「この方(Dさん)は、仕事のエネルギーの星がものすごく弱いですね」ということを言われて驚きました。
実はDさんは、外資系企業の社長です。仕事が大好きでパワフルで、Lさんから見ても私から見ても、とても仕事のエネルギーが弱いようには見えない人です。
これはどういうことなのでしょうか?
その占いの方法で見れば、たしかにDさんが持って生まれた仕事のエネルギーはとても弱いのかもしれません。ですが、実際の生活にはそのように出ていない……。
Dさんの生活は、その「仕事の星」だけで成り立っているのではなく、他の星やエネルギー、まわりにいる人々や環境、それらすべてのものが影響し合っているからなのです。
たとえば、一緒に仕事をしているパートナーの運に引っ張り上げられているのかもしれないし、会社の中に、Dさんを助けてくれる人が大勢いるのかもしれません。「助けてくれる」というのは目に見える実質的なことだけではなく、星や運勢の面から見て、Dさんの足りないところを補ってくれたり、後押ししてくれるような関係のことです。
Dさん自身が持っている他の特性が、弱い仕事のエネルギーを補っているとも考えられます。たとえば「人一倍逆境に強い」とか、「友人に助けられる」とか、「努力の星」というようなエネルギーが強く、それらが微妙に絡み合った結果、現実の仕事に結びついているのかもしれません。
婚約者のLさんが、Dさんの運を上げていることもあるでしょう。
つまり、「机上に出てくるデータだけで、その人の生活をすべて判断することはできない」ということなのです。
バリバリの外資系企業の社長に対して、「仕事のエネルギーが弱い」と言うのは、「当たる、当たらない」という言い方をするならば、大外れですよね。
当たっている7割の部分に基準をおけば、とても役立つ情報になりますが、外れた部分を参考にしてなにかを決めてしまったとしたら、大変なことになると思いませんか?
Lさんは、Dさんの仕事のエネルギーが弱いと言われて、実は大手企業の社長であることを話しました。するとその占い師は、「それはDさんが相当注意深くやったのでしょう」と言ったのです。
そんな理由であったら、どうにでも言えると思いませんか? 逆に、仕事のエネルギーがすごく強いのにうまくいっていない人たちに対しては、「よっぽど不注意だったのでしょう」と言えばいいことになります。
この占い師に言わせれば、仕事の星(だか、エネルギーだか)の数値が1から9まであるとすると、「1から3の人はかなり注意深くしなければいけない、4から6の人は少し注意が必要、7から9の人は……」というようなことを説明したそうですが、「かなり注意」と「少し注意」の差はどこにあるのでしょうか? また、人によって「かなり注意」の質も変わるでしょう。
また、仕事のエネルギーが大きく成功している大たちの人生の途中に、「落とし穴」と言えるような大事件が起こることがよくあります。一般に「厄年」と言われる時期周辺にその事件が起きたり、それまでのその人の考え方や言動の厄を祓うため、「人生の清算」のような事件が起こることもあります(エゴが強い人、なにか考え方の間違っているような糸にこそ、必ず起こると言う場合もあります)。
ですが、そのようなことを含めて、「この人は本来エネルギーが弱いのに、こんなに大きな仕事や任務を背負っていると無理がある、なにかが起こる」という意味を言っているのだとすれば、それこそ、誰に対しても言える言葉です。Dさんだけに限ったことではないし、無駄な心配事を婚約者に背負わせていることになります。
占いで良くない未来の傾向がわかったときに、それをきっかけに自分の言動を改めることは大事ですが、うまくいっている人に対して、わざとマイナスのことを誇張して勢いをおさえようとする占い師がいることも事実です。
このように、占いで使われる表現にはたくさんの逃げ道があることも多いのです。
占いで表すことのできるデータや数値はたしかにあるし、この占い師の表現がすべて間違っているということではありません。ですが、「裏を返せばこういうふうにも言える」というものだけに、一喜一憂する必要はないということです。